2010年3月31日水曜日

[論文]水陸両用のイモムシ発見される

Multiple aquatic invasions by an endemic, terrestrial Hawaiian moth radiation
Rubinoff & Schmitz 2010 PNAS

水中と陸上で同様に生活できるガの仲間の系統と進化に関する論文。

水中と陸上とで同様に生活できる昆虫の存在は従来知られていませんでした。しかし、この論文で紹介されている、ハワイのみに存在するHyposmocomaと呼ばれるガのグループは、水中でも陸上でも同様に活動でき、水中で蛹になることもできるということです。

DNAを使った系統解析の結果から、Hyposmocoma属の中の、特徴的な殻の形をもつ 3つのグループはそれぞれ単系統であること、そして、水中への適応はそれぞれのグループで独立に獲得されたことがわかりました。このような「水陸両用」な生活形態が複数回独立に獲得されたことを示す例は他には存在しないとのことです。

このような特殊な適応が複数の近縁の系統に何度も表れる現象はハワイのほかの生物にも見られるようです。筆者らは、そのような現象とハワイが他の地域から隔絶されていることとの関連性を指摘しています。ハワイには大陸の水系に存在する多くの水生昆虫が存在しないため、水中への適応が進化する機会が多く存在した可能性がある、と述べられています。

また、筆者らは、このガのグループはほとんどが特定の火山にある渓流近くにのみ生息し、開発などによって減少が心配される、もしくはすでに絶滅した可能性がある、とも指摘し、先手をとっての環境保護の重要性に触れています。

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この論文は新聞で紹介されていたのを見て知りました。

「水陸両用」のガの幼虫、米科学者が発見 -YOMIURI ONLINE

「水陸両用」なのも驚きですが、見た目がトビケラに良く似ているのも驚きです。特徴的な形をした殻を作ることや、絹糸を使って体を固定するといった、水中への適応も同じです。

論文を読んだ限りではハワイにはトビケラはいないようです。トビケラと近縁のガの仲間が同様の形質を進化させて、本来トビケラが入っているニッチに入っている(入りつつある?)、というのは、進化の予測可能性とか、以前紹介した論文にもあったPhylogenetic conservatismとかに関係があるような気がします。

(論文の内容はPNASにアクセスできないと見れませんが、Supporting Informationの動画は見ることができるようです)

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