2010年3月20日土曜日

マグロについて日本政府に望むこと-1

ここ数日日本のメディアを騒がせていたクロマグロの禁輸に関する問題は、一応の決着がついたようです。

大西洋・地中海産クロマグロ禁輸案を否決 -YOMIURI ONLINE

日本の水産や流通関係者はとりあえず胸をなでおろした、といったところでしょうか。

しかし、大西洋においてクロマグロが減少していることが事実であるならば、同様の提案は遅かれ早かれまた行われると思われます。その度に、政治的駆け引きで乗り切るのもよいですが、日本政府はそろそろ根本的な問題の解決を目指していくべきだと思います。

そこで問題解決に際して日本政府に期待することを少し書いてみたいと思います。

僕は保全生物学の専門家ではないですし、国際機関の舞台裏を知っているわけでもありません。ここではインターネットを介して得られる情報と生物学を学ぶ学生としての常識的判断に基づいて書いていくことにします。

まず、問題の背景から始めます。

今回のワシントン条約の締約国会議で大西洋クロマグロ(以下クロマグロ)の禁輸が提案された直接の理由は、去年11月の「大西洋まぐろ類保存国際委員会」(以下ICCAT)の会合で決定されたクロマグロの漁獲枠における対立にあるそうです。かねてから減少が指摘されていたクロマグロの絶滅を防ぐにはICCATの漁獲枠は大きすぎる、とEU内のいくつかの国が主張しました。それらの国は絶滅危惧動物の保護を目的とするワシントン条約においてクロマグロを絶滅危惧種として扱うことによって取引を大幅に規制し、それによって保護を進めようと試みました。

クロマグロの最大の輸入国である日本にとって、この取引の規制が実現することは大きな問題でした。(WWFのウェブサイトによると世界で消費されるクロマグロの80%を日本が消費しているとのことです)

クロマグロの輸入が行えなくなると、外食産業、輸入業者などが受ける打撃は大きく、日本としてはこの提案をできれば否決したい、との考えの下、多くの交渉活動を行ったようです。

結果、今回提出された、モナコによる案、EUによる案がともに反対多数で否決されたとのことです。提案が否決された背景には日本の活動だけでなく、反欧米主義やEU圏内での対立もあったようです。

このような形で今回の提案は否決されましたが、調査によるとクロマグロの量は乱獲が行われないときと比較して15%にまで減少しており、加えて、ICCATの科学者の提唱する持続可能な漁獲量は会議に参加した国には受け入れられなかったそうです。(こちらもWWFより)

日本によるクロマグロの輸入量は年々増加しています。一方でヨーロッパにおいては持続可能な漁業は"常識"になりつつあります。

このままクロマグロの乱獲が続き、資源量が減少するなら、漁業の持続可能性を重要視するEU諸国から将来同様の提案が持ち出される可能性があることは想像に難くないと思います。

そこで日本政府にはこのような提案に対して場当たり的な政治的対応をするだけでなく、問題の根本的な解決を進めて行くこと、すなわち持続可能な漁業の推進により積極的に関わっていくこと、を期待したいと思います。

もう少し具体的な内容は次のエントリで。

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