2010年3月23日火曜日

[本]The Oxford Book of Modern Science Writing - 科学者の展覧会

The Oxford Book of Modern Science WritingThe Oxford Book of Modern Science Writing

Richard Dawkins

リチャード・ドーキンスによる、科学者が書いた文章のアンソロジー。邦訳はまだされていないようです。

本の内容は20世紀の著名な科学者が書いた本や論文からの抜粋に、ドーキンスが短い紹介文を付けたものを集めたものです。

取り上げられている科学者は、アインシュタインやホーキングといった世界的に有名な物理学者から、フィッシャーやマイアといった20世紀前半の進化生物学者、DNAで有名なワトソンとクリックなどの分子生物学者、それに加えて古生物学者や数学者などです。20世紀の科学の発展の様子がよく理解できる、多様で幅広い選択です。

実は正直に言うとこの本、読む前はそれほど内容には期待していませんでした。いくらリチャード・ドーキンスが編集したとはいえ、本や論文の一部分を取り上げただけで、それぞれの科学者の偉業が理解できるはずがない、と敬遠していました。

しかし、実際に読んでみると、とても面白かったです。

まるで、美術館でたくさんの画家の絵を順番に観るように、次々に個性的な科学者の文章が現れます。数ページの文章だけで科学者1人1人の全てを理解することは到底できませんが、多くの文章をざっと見ることで科学者たちの個性やアイデアの多様さを感じることができます。

また、印象に残った科学者の文章の原著を実際に読んでみる、という科学書の世界へのプライマーとしても良くできています。(ドーキンス自身がそれがこの本の役割であると述べています)

個人的な好みを言うと、やはり生物学者の文章が気に入りました。例えば、レイチェル・カーソンの英文はこの本で初めて読みましたが、とても綺麗で、カーソンが環境保護のリーダー足りえたのはその文才によるところもあるのかな、と感じました。ほかにも、分子生物学者シドニー・ブレナーの新千年紀にむけた新しい生物学の方向性を説いた文章は、普通の一般向け科学書には取り上げられそうにないですが、内容がとても示唆に富んでいると思います。

ちょっとした枕になりそうな大きさの本ですが、1つ1つの抜粋は短いので、暇な時に少しずつ読みするめることもできます。そんなところも良い点だと思います。

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