2013年9月24日火曜日

就職活動はレモン市場なのか...?

最近よくニュースでブラック企業の話を見ます。
特に見ていて気になるのは、"ブラック企業を警戒しすぎて雇用のミスマッチが起こっている"という話です。

就活生悩ませる「ブラック企業検証」 白か黒か…見分ける方法はあるのか -産経新聞

「ブラック企業」に怯える若者 情報不足、過剰警戒が生む雇用ミスマッチ  -産経新聞

「日本の企業なんてみんなブラックだろ...」と個人的には思いますけど、視点を変えて、どうしてこんなことになってしまったのか考えると、面白いことに気付きました。

それは就職活動をする学生の過剰な警戒だけでなくて、そもそも過熱して長期化する就職活動自体が"情報の非対称性"が原因で起こっているのではないか、ということです。

-

"情報の非対称性"という概念自体最近ある本を読んで知ったことなので、間違っている部分もあるかもしれませんが、簡単にいうと、売り手と買い手の間で商品について知っていることに差があることをいいます。

ある商品の価値が買い手にはわからないけど、売り手にはわかるとき、買い手は損を避けるため、安く買おうとします。この結果、本当に良いものを売る人は相対的に損をして、悪いものを売る人は得をします。結果良いものを売る売り手は市場から減り、悪いものを売る売り手が増えていきます。さらにその結果、買い手はより安い値段をつけようとして、商品の値段とクオリティーがどんどん下がっていきます。このような情報の非対称性のせいで機能しなくなる市場を"レモン市場"と経済学の世界では呼ぶそうです。

-

企業が学生を選抜するとき、学生が本当に役に立つかはわかりません。その結果、会社は"レモン"(悪い商品)と"サクランボ"(良い商品)を見分けることに必死になるはずです。その結果就職活動が長引きます(エントリーシート、一次面接、二次面接、etc...)。企業は大量の情報を学生から得ることで情報の非対称性を解消する、という戦略をとって損を防ごうとしているようです。

この戦略が学生に大きな負担を与えています。しかし、際限無く長くなる就職活動の期間を見る限り、企業は現在でも沢山の"レモン"を買っている(と考えている)可能性があります。

もし企業の情報収集が上手くいっているなら、優秀な学生は得をするはずです。これは望むべきことですが、過剰な情報収集は学生を疲弊させます。一方で情報がないと、レモン市場の理屈に従って優秀な学生は損をするはずです。そして人材のマーケットの質全体が低下していくはずです。これは就職活動の本質的なジレンマなのかもしれません。

 一方で、上のニュースでは不思議な逆転現象が起こっています。
これは、"学生の側からも企業の本当の姿がわからない"、というもう1つの情報の非対称性が、昨今のブラック企業問題によって明らかになったのではないかと思います。 学生にとってブラック企業に就職することは文字通り命に関わります。学生が企業の内部の情報を知り得ないかぎりは、彼らが取りうる戦略は"できる限り警戒する" ことぐらいです。この結果本来"サクランボ"である企業が"レモン"を避けるプロセスで損をしている。これが問題のミスマッチの原因だと思います。

単純な解決策は、ブラックでない企業は積極的に情報を開示すればいいんではないかと思います。残業の総時間や○年での離職率○%などなど。情報の非対称性を解消すれば良い"サクランボ"が売れるはずです。

そもそも、学生に全ての情報(学歴からサークル活動まで)を見せることを求めておきながら、企業はその必要がないという考え方自体がアンフェアです。そして、大学で働く人間としては、企業には"レモン"を避けることばかり考えずに"サクランボ"を育てることを考えて欲しいとも思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿